精神障害者保健福祉手帳とは、精神障害によって自立が困難な方や日常生活に支援を必要とする方に対し、自治体から交付される手帳です。
この記事では、精神障害者保健福祉手帳を取得するメリットや、精神障害者保健福祉手帳の申請方法について詳しく解説します。
障害者手帳とは?
障害者手帳とは、障害を持つ方が、社会的な様々な支援を受けるために発行される公的な証明書です。取得することによって障害者総合支援法に基づく福祉サービスを受けられたり、障害者採用での就業ができたりするメリットがあります。
障害者手帳には、身体障害をお持ちの方のための身体障害者手帳、知的障害をお持ちの方のための療育手帳、精神障害をお持ちの方のための精神障害者保健福祉手帳の3種類があります。
身体障害者手帳
身体障害者手帳は、身体の機能に一定以上の障害があると認められた方に自治体が交付する手帳であり、公的な身体障害者向け福祉サービスを受ける際に必要となる証明書です
原則更新はありませんが、障害の状態が軽減されるなど変化が予想される場合には再認定を行うこともあります。
身体障害者手帳には、1級から7級までの等級があります。等級は、1級に近いほど障害の程度が重く、7級に近いほど障害の程度が軽くなります。身体障害者手帳は、6級以上の障害をお持ちの方に交付されます。
療育手帳
療育手帳は、知的障害があると判定された方に交付される手帳です。療育手帳は子どもの頃に取得する人が多いですが、成人後でも取得可能です。
自治体によって呼び名が異なり、「愛の手帳」などと呼ばれることもあります。
療育手帳を取得するためには、児童相談所(18歳未満の方)または知的障害者更生相談所(18歳以上の方)で判定を受ける必要があります。判定は医師による診察、本人や保護者からの聞き取り、心理検査などの方法で行われます。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患によって日常生活や社会生活に支障がある人を対象とした手帳です。
精神障害者保健福祉手帳の等級は、その方の「精神疾患の状況」と、それに伴う「能力障害の状態」によって1級から3級に分けられます。
障害者手帳を取得するメリット
障害者手帳を取得するとどんなメリットがあるのでしょう。
障害者雇用での就労が可能になる
障害者手帳を取得することで、一般企業の障害者雇用枠での就労が可能になります。障害者雇用枠での就労は、業務内容や勤務時間など様々な点で、障害特性に対する配慮を受けながら働ける可能性が高くなります。
税金の控除が受けられる
障害者手帳を取得することで、障害がある方やその扶養親族が、所得税・相続税・住民税・贈与税等において一定の金額の控除を受けることができます。
公共サービスの割引が受けられる
NHK放送受信料、電気・ガス・水道などの公共料金、公共交通機関や施設利用料の減免や割引を受けることができます。
障害者手帳に関するよくある疑問
Q1.障害者手帳を取得したことを会社に知られたくないのですが。
A1.自己申告しなければ、障害者手帳を取得したことを会社に知られることはありません。
ただし、申告することで合理的配慮を受けやすくなる側面もありますので、直属の上司に伝えて調整できる部分がないか一緒に考えてもらうのも良いかもしれません。
Q2.障害者手帳を取得したら障害者雇用枠にしか応募できないのですか?
A2.障害者雇用枠には障害者手帳を取得していないと応募できませんが、手帳を持っているからと言ってそれ以外の求人に応募してはいけないということはありません。
また、面接の際も手帳を取得していることについて話すかどうかは応募者本人の判断に委ねられます。
障害を持っていることを公表して働くことをオープン就労、障害を職場に開示せず働くことをクローズ就労と言います。
Q3.障害者手帳を持っていると生命保険に入れないって本当?
A3.障害者手帳を持っているからといって、生命保険に必ずしも加入できないわけではありません。保険会社によって加入基準は異なりますが、規定の基準を満たし審査に通過した場合は加入することができます。
ただし、自身の健康状態を正確に伝える「告知義務」があるため、障害や持病がある場合はその旨を申告する必要があります。
精神障害者保健福祉手帳について
ここからは、障害者手帳の中でも精神障害の方が取得することができる「精神障害者保健福祉手帳」について見ていきましょう。
精神障害者保健福祉手帳の対象疾患
対象となるのは全ての精神障害で、次のようなものが含まれます。
- 統合失調症
- うつ病、そううつ病などの気分障害
- てんかん
- 薬物依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
- そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)
発達障害の診断を受けている場合も、精神障害者保健福祉手帳が交付されることが多いようです。
ただし、知的障害を併存する場合には療育手帳も対象となります。最終的な判断は自治体によって異なるため、申請前にお住まいの市区町村の障害福祉窓口で確認することが望ましいでしょう。
精神障害者保健福祉手帳の障害等級
精神障害者保健福祉手帳の障害等級は1級から3級まであります。
1級 | 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
1級は着替えや食事など身の回りのことを支援なして行うのが難しい方であるのに対して、日常生活への支障が限定的ではあるが環境は状況によっては配慮が必要な状態が一定継続していると見なされる場合でも3級の対象となります。
いずれにしても最終的には自治体の総合的な判断によって等級が決まる形となります。
なお、精神障害者保健福祉手帳の等級と障害年金の等級には関係がありません。
精神障害者保健福祉手帳の申請に必要なもの
精神障害者保健福祉手帳の申請には以下のものが必要です。
1.申請書
2.診断書又は、精神障害による障害年金を受給している場合は、その証書等の写し
※診断書は、精神障害の初診日から6か月以上経ってから、精神保健指定医(又は精神障害の診断又は治療に従事する医師)が記載したもの。(てんかん、発達障害、高次脳機能障害等について、精神科以外の科で診療を受けている場合は、それぞれの専門の医師が記載したもの。)
3.本人の写真
※マイナンバーにより年金受給が確認できる場合には、2の書類の添付が不要となることがあります。
なお、申請は、家族や医療機関関係者等が代理で行うこともできます。
精神障害者保健福祉手帳の取得方法
精神障害者保健福祉手帳を取得する方法は以下の通りです。
- 居住する市町村の障害福祉担当窓口で、申請書をもらう
- 主治医に診断書を書いてもらうよう依頼する
- 診断書と一緒に申請書を提出する
- 自治体による審査
- 交付通知書の受領
- 精神障害者保健福祉手帳の受取
自治体にもよりますが、申請をしてから手帳交付までには2~3ヶ月の期間を見ておくと良いでしょう。
精神障害者保健福祉手帳の有効期間
精神障害者保健福祉手帳の有効期間は2年間です。2年ごとに更新が必要で、更新申請の手続きを行い、都道府県知事の認定を受ける必要があります。
この記事では、障害者手帳を取得するメリットや、精神保健福祉手帳について開設してきました。
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