杉並区阿佐ヶ谷の就労継続支援B型事業所、「tori dori」の中元さん・市倉さんに、施設の特徴や支援のやりがいについて伺いました。
tori doriの基本情報
施設名 | tori dori |
障害福祉サービスの種別 | 就労継続支援B型 |
生産活動 | 軽作業・農作業 |
住所 | 〒166-0004 杉並区阿佐谷南3丁目1番21号 徳和ビル2階 (東京メトロ 丸ノ内線「南阿佐ケ谷駅」駅より徒歩3分) |
運営会社 | 一般社団法人ハミングバード |
指定事業所番号 | 1311503013 |
開所年月日 | 2018年12月 |
電話番号 | 03-6383-2424 |
メールアドレス | toridori@hb-welfare.com |
どんな作業をしているの?
まずはtori doriさんの事業所としてどのような作業をやっていらっしゃるか、簡単
にご紹介いただいてもいいですか?
お仕事としては軽作業と畑仕事の2つをやっています。
軽作業はダイレクトメールの封入封かんなどをtori doriで作業してそれを納品する、という感じでやっています。
畑仕事は区民農園の一角で野菜を育てています。パクチーとかじゃがいもとか。
収穫した野菜は近くのタイ料理屋さんとかに売ったりして、地域との関わりも徐々にできてきていますね。
事業所での生活を彩る食事の場
ご飯も出されているんですね。
はい、お昼ご飯と夕ご飯の提供があります。
B型事業所で夜ご飯も提供されているのは結構珍しくないですか?
確かにそうですね。
常勤の職員が週1回ずつ宿直をやっているので、職員が5時半にここに来て利用者さんと一緒に食べて、片付けて帰るというような仕組みができていますね。
一人暮らしの方はコンビニ弁当を食べたりする方が多いんですよね。
ここだったら500円だし、知っている人たちとテレビを見ながら食べれるし。
こういう部分を楽しみに通われる方もいらっしゃいますよね。
今まではお昼ご飯も日替わりのお弁当を取っていたんですけど、なかなかいいお弁当屋さんが見つからなかったので、お味噌汁と納豆とか卵とかご飯のお供を用意して、こちらは無料で提供しています。
ちょっと物足りないなという方はおかずを買ってきてもらって、好きに組み合わせて食べてもらうというのを数週間前から始めました。
お弁当だとなかなか頼まない方も頼んでますよね。
毎日だと利用者さんも飽きるんですよ。それをどうしようかなと思っていて。
あとお弁当の値段も高くなってきていて、そうするとみんなの負担額も高くなるのでこの形式をやってみています。
食事を提供すると杉並区から200円の補助が出るので、200円の補助でこれぐらいだったらできます。
だからみんなは実質0円だけど、その代わり揚げ物とかメインになるものはないので、ほしいものがある人は買ってきてもらって、という形です。
結構今まで頼まなかった人たちが頼んでますね。質素ですけど毎日だとむしろちょうど良いみたいで。
コンビニ弁当より温かみがありますよね。
ご飯だけ食べに来られる方も増えましたね。
作業については入っても入らなくてもどっちでもいいよというスタンスでやっていて。
うちは病院から退院された人がやっと繋がった場所、就労はかなり先で今はまだ考えてないという方が利用者イメージとしては強いです。
仕事仕事ってならず、居場所として使っていただければなという思いでやっています。
同じB型事業所同士でも、利用者さんのニーズに応じた住み分けというか、カラーがいろいろあるのが大事ですよね。
お酒を通じたコミュニケーション
実は先月から、toridoriを土日レンタルスペースとして貸し出すというのをやり出したんですよ。
ただ、まだお客さんがあまり来ていないのでぜひ来てほしいです。
内装もおしゃれだし、お料理を作ってパーティーとか良さそうです!
うちの事業所でも月1回、お鍋とか手巻き寿司とかを作って夕食を食べるイベントをして、その日はお酒もOKにしています。
お酒が入ると皆さん違う一面を出してきますよ笑
交流が少ない方が多くて、お酒を飲むのもそこが唯一みたいな方ばかりなので、楽しみにしている方も多いです。
お酒の場に不慣れな人もいて、酔い潰れて僕に怒られて、次の回からは「まだ飲むの?」って小言言われたり笑
でもそれもなんていうか社会経験というか。
そうですよね、外で失敗するよりはこういうところで経験を積むのがいいですよね。
確かに、お酒を通じたコミュニケーションってあまり機会がない方も多いかもしれないですね。
福祉の規範から脱するみたいな見方をされるところがありますからね。
「お酒出すの?」って怪訝な顔をされたりとか。
お医者さん止められてる方もいらっしゃって、そういう場合にはもちろんいいよとは言えないですけど、そういう方はお酒は飲まずにずっとソフトドリンクで参加していたりしますね。
レクリエーションについて
元々B型事業所が「作業所」と呼ばれていたような時代は、バレーボールとかフットサルとかいろんな事業所でやられてたんですけど、最近スポーツをやらない事業所も多くなっていて。
やっぱりB型も就労の支援をする場だし、工賃を稼げば事業者の収入も増えるし、国の制度としてその辺の流れが強くなってからどんどんスポーツをやらない事業所が増えてきているんですけど、頑張ってうちは積極的にやってますね。それも特徴的かなと。
ブログ拝見しました。色々やっていらっしゃるんだなと思って。
【tori doriさんの日々の様子がわかるHumming Bird Blog】
イベントはコンスタントに月1ぐらいでやっている感じですか?
そうですね、外出レクとスポーツは月に1回ずつ。
レクがお好きな方もいれば、「私は参加はしないで一人でいたい」という方もいらっしゃいません?
最近ちょっと外出レクの参加者が増えてきたので、やり方を変えてみています。
月に2回設定して、どちらかを選んでもらうんです。
そうすると1回当たりの参加者が少なくなるので、イベントの日も事業所を開けて、レクには行きたくないという人は事業所に残るという選択肢が取れるようにしてみようかって。
選択肢があるのは大事ですね。
あと、このパンフレットに「区に出す書類関係が全然わからない(場合の支援)」って書いてありますけど、こういった部分のご支援も大事ですよね。
月に1回、生活支援プログラムといって作業とは全く別の勉強会みたいなものをやっています。
一人暮らしにまつわる悩みを解消しましょうというプログラムなんですけど、今月はセルフレジの使い方がわからなくて買い物できないという悩みを解決しようというテーマで実施する予定です。
こういう社会生活の中で難しい事って年々増えて来ているなと感じますよね。
企画はどのように考えているんですか?
毎月20日に利用者さんも入れたミーティングをして、来月はどうするか、カラオケいつ行く?とかレクは何する?とか意見を出し合って決めていますね。
それは有志の方が集まってですか?
そうですね、結構参加者数が多くて、10人以上は来てくれますね。
海水浴まであるんですね!
どこまで行くんですか?
鎌倉の材木座海岸です。すごくいいところがあるんですよ!もし行かれる時はご紹介します。
日々の喜びと大事にしていること
Q.tori doriさんでの毎日の中で喜びを感じるのはどんな時ですか?
喜び、そうですね…。
うちにつながる前はずっと家に引きこもっていたりとか孤独だった方が、こういうところに来てだんだん横のつながりができて、つながりができてくるとだんだん来る日数も増えていくんですけど、そうやってちょっとずつ変わっていく姿を見るのがやっぱり嬉しいですね。
やっていてよかったなと。
僕も同じこと言おうとしてた笑
特に最近の新しい人たちですけど、そういう引きこもっていたという方とかが紹介で来ることが多いんですね。
なのでそういう人たちがさっきお伝えしたように週1週2のスタートで、それすら来るのも微妙だなって来なくなる人もいらっしゃるんですけど、そういう人たちがどんどん楽しそうにここに居てくれるようになっていくっていうのはやっぱり嬉しいなと思って見ていますね。
Q.支援の中で大事にしていることは何ですか?
僕はやっぱり楽しい場所を作りたいなと思っていますね。
就労のこととか色んな考え方があってもいいと思うんですけど、ここに来たら楽しいなっていう…それはワイワイしゃべるだけじゃなくて、ほわーんと楽しい感じで過ごす、でもいいんですけど、そういう場所を作りたいなと思ってます。
東京都は設備が揃っていれば開設のOKを出してくれるんですけど、そういう無機質な施設やいわゆる昔ながらのごちゃごちゃした福祉施設って僕はあんまり好きじゃなくて。
やっぱり綺麗な場所だと気持ちもいいですし、ざっくりしてますけど楽しい場所を作りたい、やっていきたいというのはありますね。
「また来週来たい」と思うってことですかね。
そうそう、そうですね。
ここからまた違うところに就職したり、頑張ってうまくいかない人もいたりするけど、そんな時でもまた戻ってこようって思えるような、そういう事業所がいいなと思いますね。
中元がよく言っている、「自分が当事者になっても通いたいなと思える場所を作る」というのはとても大事にしています。
綺麗で清潔な空間であったりとか、納得できる仕組みであったりとか、そういうのは一つ一つ大切にしたいですね。
あと、個人的には偉そうにしないということ。どうしても支援する側・される側で立場が作られてしまうんですよね。そこは本当に気をつけていきたいなと思っています。
まとめ
就労継続支援B型事業所tori doriは、通所することによって生活リズムを整えたり、レクリエーションや食事の場を通じて友人を作りたいといった思いをお持ちの方にぴったりの事業所です。
また、お洒落で居心地の良い雰囲気も魅力の1つです。
病院から退院したり、家に引きこもりがちになってしまっていたところから一歩踏み出す時、どんなところなら当事者の方が安心してつながりを持てるのか。tori doriさんの取り組みが参考になれば幸いです。
取材した感想
B型事業所にも様々な方針を持って運営されている所がある中、tori doriさんは「再び社会につながる入口」として、利用者さんの生活基盤を支える事を大事にしていらっしゃる点が特徴的であり、そのようなサポートを必要としている方にぜひつながってほしいと思いました。
昨今障害をお持ちの方の選択肢を広げることの重要性が説かれることも増えてきましたが、その選択肢がわかりやすく比較検討できる状態であること、そしてそれを自己決定できること、各段階におけるサポートを拡充させ、ニーズに合った場や人と出会えるようにしていきたいと感じました。