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AIを鏡に、哲学と精神疾患を考える【ジルベルト TAKAHIROさん】

神戸にある株式会社ジルベルト 就労継続支援A型事業所「THE VISION」にて東京から在宅で就労しているTAKAHIROさん。パパゲーノが2024年9月1日に開催した「AI福祉ハッカソン」にも参加し、生成AIを用いたAI相談サービスの開発に挑戦いただきました。この対談では、AIという切り口で「哲学と精神疾患」について考えていきます。

名前TAKAHIROさん
所属株式会社ジルベルト 就労継続支援A型事業所 THE VISION
(在宅勤務・1日8時間×週5日勤務)
診断名・ASD(自閉スペクトラム症)
・ADHD(注意欠如・多動症)
・双極性障害
希望・ジルベルトで正社員になる(ピアサポート・精神保健福祉士の資格を生かす)
・哲学と福祉と精神疾患関連で研究をしたい。大学院の博士課程も考えている。
・YouTubeでの発信活動を続けていく。障害年金の申請書や就労状況のものの認知を広めたり、哲学の動画を出していきたい。
困りごと・眠れないことに1番困っている
・ADHDの影響で物忘れが多い、衝動性が強い、カッとしてして怒ってしまう
・ASDの影響で、コミュニケーションや人間関係の構築を円滑にとることが苦手
AI活用法ショート動画の制作に動画生成AIを活用

入院していた方の方が自分より社会性があると気づき病院へ

やすまさ
やすまさ

まずは自己紹介をお願いします。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

神戸にある株式会社ジルベルト 就労継続支援A型事業所 THE VISIONを2023年5月から在宅で利用していて、フルタイム(1日8時間・週5日)で働いています。

疾患の診断としては、現在はASD、ADHD、双極性障害の3つの診断を受けている状況です。

以前、障害福祉施設で働いていた際、ASDの診断がついている利用者さんから「TAKAHIROさんの方がASDじゃないですか」と言われたのがきっかけで受診しました。国立精神神経医療センターで検査を受けて、ASDの診断がついています。

ADHDについては、物忘れの多さや衝動性・易怒性の強さがあり、2回の検査を受けて診断がつきました。

双極性障害に関しては、障害年金を申請する際に診断がついたものになります。

やすまさ
やすまさ

診断を受けるきっかけは、障害福祉施設で働いていた際に利用者さんから言われたことだったんですね。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

そうです。グループホームや自立訓練、就労継続支援B型事業所を運営する法人で、正社員として働いていました。長期入院の方が多く、同じ病院から来る利用者同士が友達になりやすくて、和気あいあいとした雰囲気がありました。

「入院していた人たちの方が、自分よりもよっぽど社会性があるぞ」ということに驚きました。本音も冗談もうまく言い合っているんです。

自分はコミュニケーションや人間関係の構築が苦手なんだと実感して、病院での診断を受けようと思いました。24〜25才頃、社会人1年目のタイミングでした。

神戸の就労継続支援A型に所属して、東京の自宅から在宅で働く

やすまさ
やすまさ

今は就労継続支援A型事業所「THE VISION」さんで利用者として雇用契約を結んで働かれていると思いますが、どんな経緯で「THE VISION」さんで働き始めたのでしょうか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

ジルベルトで働き始めたのは2023年5月からです。

新卒で入社した障害福祉施設を辞めた後、2年半ほど傷病手当金と失業保険を受給していました。その後、タクシーの配車オペレーターとして働きました。電話を受けてタクシーを手配する仕事をしていたのですが、とても辛くて6ヶ月ほどで退職しました。そのタイミングで、アルバイトをするなら就労継続支援A型事業所の利用もアリかもしれないと考え始めました。1社目の障害福祉施設での勤務経験から、A型の存在を知っていたことは大きかったです。そして2023年4月に焼き鳥の串打ちをする就労継続支援A型事業所で働き始めたのですが、体力的に厳しく、将来性が見えないため、すぐに他の仕事を探すことにしました。その時に、X(旧Twitter)のジルベルトの利用者の投稿で「在宅で働ける就労継続支援A型」があると知り、Xで繋がったジルベルトの利用者さんにサビ管を紹介していただいて、体験を経て、雇用契約するに至りました。

やすまさ
やすまさ

東京に住みながら、神戸の就労継続支援A型に所属して在宅で働くってすごいですよね!

TAKAHIRO
TAKAHIRO

そうですね。月に1度は支援員の方が東京に来ていただいて面談をしています。それ以外は、基本的に自宅からパソコンを使って問題なく仕事できています。

利用者が無理なく働ける範囲で徐々にステップアップする形

やすまさ
やすまさ

「ジルベルト」さんと言えば、障害福祉業界ではYouTubeがとても有名だと思います。

YouTubeで見ていて、「障がい者を納税者に」とか、結構ガツガツした印象が強いのですが、実際に「ジルベルト」さんで働いてみていかがですか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

「障がい者を納税者に」というワードが強いのでスパルタな印象を受けるかもしれませんが、実際は、利用者が無理なく働ける範囲で徐々にステップアップする形で進められています。

思っていた以上に「王道なことをしているな」と感じています。実際、YouTubeで話していることも、突飛なことを言っているわけではないのかなと思います。

やすまさ
やすまさ

仕事内容としては、どのようなことをされているんですか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

公式Twitterの運用や投稿の作成、資料作成などの業務があります。

今年度からは動画編集に力を入れて、スタッフ10人ほどで、外部からの動画編集案件を受けています。施設外就労として、電化製品の出品代行や古着の販売なども行っています。

私は少し特殊な業務として、業務委託を受けているコンサルティング案件の資料作成などを任されています。

例えば、クライアントとの会議の文字起こしデータをもとに、クライアントからの質問に対する回答をわかりやすくまとめ、マニュアル化して、社員が共有できる文章を作ったりしています。

就労継続支援A型で働きながら、副業でYouTubeを始める

やすまさ
やすまさ

TAKAHIROさんはYouTubeやブログも活動されていますよね。こういった活動はどんなきっかけで始めたんですか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

もともとジルベルトは1日4時間勤務でした。そこから「収入を増やしたい」と考え、自分が住んでいる自治体は就労継続支援A型の利用をしていても副業・アルバイトが可能だと確認できたので、副業・アルバイトを検討しました。それをジルベルトに相談したところ「まずは勤務時間を延長するのはどうか」と提案があり、現在は8時間勤務となっています。

1日8時間・週5日勤務にも慣れてきたので、精神保健福祉士の資格を活かして更に収入を確保できないかと考え、YouTubeとブログを始めました。

やすまさ
やすまさ

動画編集などはもともと得意だったんですか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

動画編集のスキルは、全くありませんでした。

ジルベルトで動画編集の仕事をやって基礎を学んでいます。どの動画編集ソフトも基礎は一緒なので、あとは独学でいくつかのツールを使っています。最近はYouTubeで障害年金について発信するゆっくり動画を「ゆっくりムービーメーカー」という編集ソフトを使用して作成し、投稿しています。

やすまさ
やすまさ

YouTubeチャンネルを見ると、妖怪のショート動画もたくさん公開されていますよね。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

YouTubeのショート動画で妖怪の動画が再生されているのを見て「これなら自分もできるかも」と思って始めました。ChatGPTで妖怪の画像を生成し、Haiper AI(ハイパーAI)で妖怪を動かして動画にしています。それが意外とうまくいって再生数も伸びたので、継続的に制作しています。

やすまさ
やすまさ

副業で収入を増やすために始めたということでしたが、収益化はできているのでしょうか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

YouTubeやブログからの収益は、まだ全然上がっていません。YouTubeは、ようやく10月の後半に収益化が可能になりました。

次のハードルはYouTubeから収入を実際に得ることです。ただ実際に収益化を目指す中で、視聴回数が増えたり、チャンネル登録者数が増えていくのは面白かったです。

やすまさ
やすまさ

着実に努力されているんですね。広告をつけるのを目標に攻略していくのも楽しんでいる印象です。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

最初は手応えがありませんでしたが、努力すれば実現可能な目標だと実感できてからはYouTubeの動画制作も楽しく取り組めるようになりました。

当事者がどう感じて何を語るか、どう生きたいのかという「ナラティブ」の重要性を学問したい

やすまさ
やすまさ

今後挑戦したいことや目標を教えていただけますか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

まず、ジルベルトで正社員になることが目標です。ピアサポートと精神保健福祉士の資格を生かして障害のある方の支援に貢献したいと思っています。

また、哲学や障害福祉、精神疾患についての研究もしてみたいですね。大学院の博士課程に進むことも検討しています。

YouTube活動を続けることも大事な目標です。自分の障害年金の診断書や就労状況申立書を公開することで、認知度が上がればいいなと考えています。哲学を活かした趣味の動画も発信していきたいです。

やすまさ
やすまさ

哲学についてはどのようなことを発信していきたいですか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

精神疾患を抱える人たちの「語り」そのものが自己のリカバリーにつながり、知の一形態としても成立するということの探究ですね。単なる思い込みではなく「独自の知を持つ語り」として認識されるような研究をしたいと考えています。

やすまさ
やすまさ

なるほど!パパゲーノが掲げている「リカバリーの社会実装」や、精神障害当事者の語りを届ける「リカバリーナラティブ事業」にも通ずるものがありそうです。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

哲学の観点から見ると、かつて精神疾患を持つ人々は「存在しないもの」と認識されていたんです。カントの時代には、「人権」とは理性的な主体のみ該当して、精神疾患者は「理性的でない内容を語る」ために、排除されていました。戯言、妄想、他人に理解されないものを語る精神疾患の人は、理性的な人格としての人間主体を認めたい運動の真逆にあったんですね。

しかし現代では、障害福祉や哲学の分野で、精神疾患の当事者が自分の物語を語り、体験を共有する「リカバリー」や「ナラティブ」を重視した動きが広がってきています。例えば、「べてるの家」が有名です。統合失調症の方に妄想の内容を語らせ、それを通じて世界観を共有し、一緒にその人の統合失調症の世界を共に歩むという取り組みが行われています。

当事者が社会からの抑圧や強制を受けず、自由に語ることができる環境があるべきで、その語りには知の普遍性や妥当性、固有性や必然性があると私は考えています。世界と関わり合いながら、自分を表現することを通じて自己の回復(リカバリー)に繋がると思っています。

疾患の名前はあっても、どう生きるかは「個別」の問題

やすまさ
やすまさ

障害という言葉自体、今では「医学モデル」ではなく「社会モデル」と言って、障害は個人ではなく「社会環境」にあるという考え方が一般化しつつありますよね。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

疾患や障害というと、名前がついて、一般化・概念化されてしまいます。ですが、疾患名はあっても、「何が生きる上での障害になっているか」「障害とどう向き合いながら生きるか」というのは、非常に個の問題になります。

当事者がどう感じて何を語るか、どう生きたいのか。「自己」という唯一無二で代替不可能な存在をどう回復し、どう生きていくか。あるいは「この自己の人生でよかった」と、どうしたら人生の肯定が自覚できるのか、が重要ですね。

この視点から着想すると、より意義ある議論ができるのではないかと思います。

やすまさ
やすまさ

個人に固有の「リカバリー」や「生きててよかったという実感」が大事というのは、まさに障害福祉施設を運営していても実感しています。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

「普遍的な真理の追求」よりは、「個々の生き方」、その瞬間、瞬間の現実にある自己と世界を肯定できるかに着目する「実存主義」の流れが、障害福祉や精神医療におけるリカバリーという概念の裏水脈としてあると思っています。

「道徳法則」や「人間はこうあるべき」という規範やモラルに従うよりも、「個人の独自性」を重視して、自己自身と世界が一体となり、どれだけそれを肯定できるかという方向に近づいていくのかなと思います。

例えば、LGBTQの文脈でも議論されていますが、「人間としてこうあるべき」という固定的で画一的な価値観から解放されて、今生きている「個人」を尊重して、今の現実や事実をどう肯定できるかを考える方が建設的です。

やすまさ
やすまさ

僕も大学生の時にキュルケゴールの「実存主義」に触れて、勇気づけられたのを覚えています。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

キュルケゴールが語る『死に至る病』の「絶望」は、うつ病に通じるものがあると思います。彼の定義では「死が希望となるほどに危険が大きいとき、そのときの、死ぬことさえもできないという希望のなさ」という状況が絶望であり、自己だけではどうにもならないという状態です。

絶望を克服するために、キュルケゴールは「絶対者」を説いています。「神の前にただひとりで立つ」ことで絶望は救済されるわけです。絶対者や神などが出てきて壮大な話にも聞こえますが、キルケゴールの肝は「ただひとりで立つ」という単独者の姿勢、それも能動的に「立つ」という根源的な主体性、つまりは「固有の自我」をどう生きるかに通じているところにあります。

うつ病に限らず、疾患の回復も「万人を治療する共通の方法」ではなく「固有の自我をどう生きるか」という視点で語ることができればと感じますね。

やすまさ
やすまさ

聞けば聞くほど、哲学を学ぶことは障害福祉の支援現場で役に立ちそうですね。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

とはいえ、哲学は簡単ではなく、劇的な解決策というわけでもないです。自己啓発本のように「1冊読んで人生が変わる」ような即効性はありませんが、哲学的な視点に触れることで得られるものは確かにあります。

精神疾患に関わっていると、やはり「人生」や「生きること」そのものが課題として浮き上がる場面が多いです。哲学の視点が少しでも頭の片隅にあると、困っている障害当事者に対する捉え方や支援の幅も広がるのではないかと思います。

「こう生きれば幸せだ」といった指針がない時代をどう生きるか?

やすまさ
やすまさ

ジルベルトさんで社員を目指したり、哲学や精神疾患の研究をしたり、YouTubeでの発信などに挑戦されていますが、疾患の症状として生活や仕事で困っている部分はどんなことがありますか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

寝られないことと、時折うつ症状として「無価値感」が出てしまうことに困っています。

睡眠の問題は睡眠薬が処方されています。

うつ症状については、一種の「無意味さ」を感じてしまうんです。カウンセラーさんからは「哲学をやっていたから、そういう発想になるんだね」と言われます。例えば、死にたいと思う人は「元気になりたいけど、元気になれないから死にたい」などと条件付きで「死にたい」と考えることが多い印象です。「こうなれば生きたい」と考える条件が潜んでいる「条件付きの死にたい」である場合、条件が満たされれば生きる意欲も戻る可能性があります。

しかし、私の場合は、「人生そのものを肯定できないから、生きている意味が感じられない」といった感覚なんです。幸福になるための条件が全て満たされても、おそらく幸福であると共に人生の虚無観を感じてしまうのが自分のうつの感覚です。ふとした瞬間に「今やっていることに意味がない」と感じてしまいます。目的を達成することにやりがいを感じるのもありますが、ふと同時に馬鹿馬鹿しく思えてもきます。

よく「穴の空いたバケツで水を汲んでいるような状態」と自分は表現するんですが、そんな風な無意味さがつきまとってしまうのが困る点です。

もともとこうだったのか、それとも哲学を学び始めてからなのかは分からないんですが、何をしていても空虚さを感じてしまうことが多いですね。

やすまさ
やすまさ

空虚感が出てきた時は、どのように対処しているんですか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

そういう思考になったら、まず休みます。横になって手を止め、リラックスできるようにします。

また、月に1回カウンセリングを受けていて、その際に「どうすればそう思わなくなるか」という考え方について話します。対話の中で考え方を少しずつ広げていく感じです。自分の考えだけに固まらず、他者と話すことで視野を広げるようにしています。

やすまさ
やすまさ

技術革新と経済成長で、日本も自由で豊かになってはいると思うのですが、何となく空虚さを感じている人は少なくないように思います。

僕も大学時代に「生きることの意味」がわからず、哲学に救いを求めていた時期がありました。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

現代は宗教的な価値観が崩れ、「こう生きれば幸せだ」といった指針がない時代です。例えば、キリスト教が「こう生きれば幸せですよ」と教えてくれても説得力がない。ニーチェではないですが、「神が死んだ」後の時代に我々は生きているわけです。少なくとも、自分はそのように自覚しています。

好きに生きれる代わりに、自分で意味を構築して見出さなければならない。そのために、虚無感を抱くことが多い気がします。理想は「そういう時に生きることそのものに意味がある」と自覚することなのですが、辛いこともあって、そのような自覚が出来ないので悩んでしまいますよね。反出生主義(生まれてこない方が幸せで、新たな命を産まない方が良い)という考え方もありますが、自分は「生きていることそのものに価値がある」「存在していることそのものが意味である」と考えたいです。どんなに苦しい人生でも、「生命そのもの、存在していることそのものに価値があると思考するのが重要」と思っています。

哲学を通じてその感覚が深まるのか、他の方法でもそうなれるのか、その方法論は気になるところです。

物語を作るという行為もまた、生きる価値の自覚を深める一助になるのではと感じています。ヤコービという人物がフィヒテという哲学者を批判した時の文脈にあるのですが、どのような活動であったも、主観だけによる活動では客観性を得られず虚無の上に「空転」してニヒリズムに陥るというものがあります。物語を語る際も、延いては表現行為全てに通じますが、全部自己の自由には表現できない「制約」があるからこそ、世界と他者とつながり、自己を全肯定できる側面があるのかなと考えています。

AIによって再定義されるソーシャルワーカーの役割

やすまさ
やすまさ

生成AIについてTAKAHIROさんはどんな風に捉えていますか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

現在は主にYouTubeのコンテンツ作成で生成AIを活用しています。また、先日パパゲーノさんが開催していたAI福祉ハッカソンでは、AIにコードを書かせてAI相談窓口のサービスを開発してみることにも挑戦しました。

画像生成で使うことが多く、AIの偶然性を楽しむような使い方をしています。同じ指示(プロンプト)でも出力される画像は毎回異なります。AIというと決定された機械論的なものと思い込みがちですが、「AIに自由な発想をさせたらどうなるか?」を楽しんでいます。

やすまさ
やすまさ

アートの世界でも、「AIを通じて、人間の本質やアートの本質の理解が深まっている」という話を聞いたことがあって、確かにと感じました。

AIに任せられるものが増えていくと、人間の本質的な価値や、ソーシャルワーカーの役割も再定義される気がします。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

工場ができた時にも、「職人が失われるんじゃないか」と言われていました。でも、聞いた話ですがスペースシャトルのネジは今でも特定の職人の手で作られているそうです。

機械が発達すればするほど、「人間の固有性」が浮き彫りになります。AIが描く絵が増えても、ダ・ヴィンチの作品は彼にしか描けなかったように、「人間のオリジナリティは際立つ」と思います。

やすまさ
やすまさ

一方で、ChatGPTなどのLLMを使っていると、本当に賢くて、進化のスピードもすごいですよね。

これまでの機械と人間との競争とはまた別の次元で、「AIが人間の知能を超える」とも言われてますが、どう思いますか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

AIがいくら賢くなっても、例えば「哲学する」という行為はAIにはできないと思っています。哲学するとは、「概念化しえないものを概念化していく作業」です。AIに文章を読ませて、既存の概念に基づいて文章を作ることはできるのですが、概念化されてないことを概念化することは難しいと思っています。

例えば人間が「走る」という時。「走る」と「歩く」の差は曖昧で言語化し得ない世界を人間は生きています。「走る」と「歩く」という曖昧な世界を、人間は表現して言葉を生成していきます。「赤」という色も、様々なグラデーションがある中で、或る特定の色を「赤」という概念で表現して生きているわけです。

現代文を読ませて、大事な点を要約することはできると思うのですが、意味を作り直す、言葉や言葉の意味を創造していくような作業は人間にしかできないのかなと思います。

まさに、意味や価値を創造して、言葉を紡ぐナラティブのような行為が人間の価値になるということです。

やすまさ
やすまさ

最後に、AI時代のソーシャルワーカーの役割はどうなっていくと思いますか?

TAKAHIRO
TAKAHIRO

支援者としての仕事の仕方や役割は、大きく変わっていくと思います。

AIを使ったら「最適解」がすぐに見つかります。障害のある人に対して「専門知識を武器に最適解を教える」ということの価値は相対的に低いものになるでしょう。今後の人間の価値は「行動」で決まり、「行為の現場」に立ち戻ってくると思います。

利用者と一緒に話し合いをする、行動を一緒にすることでイメージが膨らんで、進むべき道先も見えてくる。そういう「行為の伴走者」としての役割が強くなっていくのかなと思います。

TAKAHIROさんから読者の皆さんへのメッセージ

アリストテレスという哲学者が言うように、人間は動物でも神でもない存在のため、1人で生きていくことは出来ません。そのため、人間は共同体に属して自分ではない他者との共存が必要不可欠な存在です。

しかし、滝山病院での虐待の事例やコロナ禍で満足な治療を受けることが出来なかった事例など、まだまだ精神障害者は社会から疎外されています。当たり前の自由や人権すら与えられていないのかもしれません。しかし精神障害者だとしても決して別の世界の別の生き物ではありません。同じ大地を踏み、同じ空を見上げて、同じ世界を生きる人間です。全ての人が精神障害者を受け入れるのは困難なことです。だからこそ精神障害者に携わる福祉人は精神障害者の人生の伴走者であって欲しいと強く当事者として思います。人間、誰か1人だけでも自分を推してくれる人がいると分かると嬉しいものです。リカバリーはこうした些細な関係からも生まれる気がしています。

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