こんにちは。株式会社パパゲーノ代表の田中康雅(やすまさ)です。今回は、精神障害を持つ方々に自立訓練サービスを提供するConatus Suginami(コナトゥススギナミ)を2023年11月23日に訪問し、自立訓練・就労定着支援サービスの利用者さんや卒業生さんのコミュニティ活動に参加した体験レポートを共有します。
Conatus Suginami(コナトゥススギナミ)とは?
Conatus Suginami(コナトゥススギナミ)とは、杉並区にある主に精神障害をお持ちの方を対象とした福祉施設です。「自立訓練」「就労定着支援」「放課後等デイサービス」など、「おとな」から「こども」まで、ライフステージを跨いだ障害福祉サービスの提供をしています。また、グループ・アプローチの技法を用いて「ライフサポートプログラム」の支援を提供していくことで、利用者さんのコミュニティ参加やキャリア形成、生活の支援から就労の支援まで、幅広い課題に取り組まれています。
Conatus Suginamiの事業内容
- 自立訓練事業
- 就労定着事業
- 放課後等デイサービス事業
- 特定計画相談事業
- 自立生活援助事業
Conatus(コナトゥス)の語源
「コナトゥス」という言葉には、16世紀の哲学者スピノザによる定義で「本来の自分でいられる場所」という意味があるそうです。これにちなんで、「Conatus Suginami(コナトゥススギナミ)」と名付けられています。
所在地・アクセス
自立訓練(生活訓練)事業所
〒167−0042 東京都杉並区西荻窪北2丁目1番10号 並の一ビル1F・2F
放課後等デイサービス事業所
〒167−0042 東京都杉並区西荻窪北4丁目24番10号 東都ビル2F・4
Conatus Suginamiの魅力
「スタッフへのインタビューではなく、メンバーさんのインタビューならば…」ということで、「Conatus Suginami(コナトゥススギナミ)の良いところと悪いところ」をテーマに、利用者、卒業生、支援者のみんなで意見交換をしている様子を見学させてもらいました。今回は、その中で私が感じた4つの魅力をご紹介します。
【1】やさしいコミュニティ
Conatus Suginamiを見学していて印象的だったのが、「本来の自分でいられる場所」というコナトゥスの名前に込められた名前の通り、とてもあたたかな雰囲気のコミュニティであること。
「職場の同僚でも、友達でもない。でも、誰もが互いを尊重し合う仲間」として、とても健全な距離感で交流されていたのと、利用者さん、支援者さん、さらに卒業生の方も含めて、事業所の魅力や改善点を安心して議論できる場があること自体が素敵なことだなと感じました。
そして、この「あたたかな雰囲気のコミュニティ」の背景には、グループからコミュニティへつなぐスタッフの技術力や、コミュニティ心理学に基づいたプログラムの専門性があるとのことです。
スタッフがうまく輪に入れていない人に話しかけてくれる。なので、集団を苦手に感じている人でも、他のメンバーさんと無理なく関わり合うことができる。
最初はあくまでプログラムを一緒に受ける仲間で、友達を作りにくるところではないけど、雰囲気がよく打ち解けやすく、結果的に仲の良い関係になる。
そもそもレクリエーション活動のプログラムには、みんなでやると楽しいと感じる、グループに巻き込むきっかけが組み込まれている。
利用者同士でネガティブな影響を拡散しあわないよう、スタッフがしっかりとファシリテートしてくれる仕組みがある。
【2】失敗しても大丈夫なプログラム
Conatus Suginamiのプログラムは、間違えても周囲が必ずフォローしてくれる雰囲気があり、失敗しても咎められないという安心感があるよう。時には、苦手なことにぶつかったり、自分の嫌な面が出たりもするけど、そこでも心が折れないよう配慮して、適切なフィードバックやサポートをしてくれるとのことです。また、言いにくいことは個別相談や定期面談で対応してくれるなど、個別支援もしっかりと整っていて、集団援助を個別援助でちゃんとバックアップできる仕組みも工夫されています。
スタッフや他のメンバーからポジティブなフィードバックを受けることができる。特に他のメンバーからのフィードバックは大きく、スタッフだと支援者だからと構えてしまうが、メンバーからだと素直に受け入れることができる。
参加者同士が安心して交流ができるよう、スタッフがグループの代わりに声をかけているので、変な注意をする利用者もいない。お互いの良いところに焦点が当たるので、安心して交流することができる。
間違えたり、失敗したりしても、咎められない。メンバーは間違えたことを温かく見守ってくれるし、スタッフはその対応策を一緒に考えてくれる。だから、失敗しても大丈夫と思え、安心して自分の課題に向き合うことができる。
【3】自己理解を徹底的に深められる
スポーツ、アート、外出や料理、健康教育や心理教育、事務補助や環境整備のトレーニングなど、Conatus Suginamiのグループのプログラムは色々とありますが、全ては個人の目標に還元できるように組み立てられているとのことです。それらの支援によって深められた自己理解が、修了後の利用者さんのキャリア形成やコミュニティ参加に非常に役に立っているようでした。
どういう時に、どういうダメなところが出てくるのかのフィードバックを繰り返して自己理解を深めたことが一番役に立っている。例えば、新しい仕事の覚え方で「見本を見せてください」というと自分は飲み込みが早いタイプ。でも、それだけでは自己流になってしまうこともあったので、最初のうちは「確認」の回数を増やして、認識のズレが起きないように徹底しておくと、ミスなく、高いパフォーマンスを発揮できる。それを理解できているから、職場で新しい仕事もできるようになっている。そこに気づいてなかったらどんどん自信を失っていたと思う。
「これがわかんない」というと「何がどうわからないのか?」を聞かれる。自分の障害について、自分が理解するだけでなく、(職場などの)相手も理解できるようになるまで特性を整理し、さらにそのことを伝える練習もできた。同じ障害でも、共通点もあれば、相違点もあり、自分に合った対処方法について、スタッフと一緒に丁寧に深掘りできた。
集団の目的のためには個人の目的は犠牲しないといけないものと思い込んでいたけど、集団の目的と個人の目的は両立するものだと学んだ。
【4】ソーシャルサポートを受けられる
Conatus Suginamiの環境支援の取り組みとして、ピアサポートと言う福祉コミュニティの形成も支援していて、各種プログラムはそこに通ずるチャネルでもあるとのこと。なので、グループでのメンバーさんやスタッフさんとの関わり合いを通して、コミュニティへ社会参加するための人間関係の在り方を実践的に学ぶことができるようです。同時、それらは困った時に支え合うソーシャルサポートや、職場や施設で自分のことを伝えていくエンパワメントにもつながっていくとのことです。
学習プログラムの中で、「健康管理」や「病気の予防」には主体性が大事と学んだけど、最初はあまり実感がなかった。しかし、様々なレクリエーション活動のグループワークの中で、次第に準備や片付けを率先してできるようになったり、新しく入ったメンバーさんに自分から声をかけられるようになったりしていくようになった。そのような経験を通して、健全な人間関係の構築に必要な主体性を獲得できたと思う。
友達との距離よりは少し遠いけど、それで心地よい人間関係を築けるというのがすごい発見。仲良しこよしをしなくても、心地よく過ごせる距離感がある。他人でも友達でもない人と楽しい空間を過ごせる。そう思うと、家族との距離感も、近すぎなくてもいいんだなと思えるようになった。距離感は自分で選べるということがわかった。グイグイくる人に対してはそれに押されていたが、今は自分がどれくらいの距離感だとその人と一緒に過ごしやすいのか、どういう関係性になりたいのか、ちょうどいい距離感を選べるようになった。
おわりに
なぜスタッフへのインタビューでなく、メンバーさん達へのグループインタビューだったかのか…それは、「ヒューマンケアサービスが支援者のためのサービスではなく、利用者のためのサービスであり、そこでフォーカスされるべきは利用者であるため」とのことで、Conatus Suginamiさんへの訪問・見学は、私にとって非常に意義深い経験でした。また、先に企業へ就職した先輩が、Conatus Suginamiで受けたプログラムを振り返りお話ししている様子など、とても印象的でした。身近にロールモデルがいることは、現在利用中の方にとっても刺激になる部分が多くありそうだと感じました。
Conatus Suginamiさんは2023年10月にホームページをリニューアルしたそうです。
ご興味ある方は、ぜひホームページを確認してみてください!