「相談支援専門員が面談の合間に書類作成に追われる」――そんな“当たり前”を覆そうと、パパゲーノが開発した支援現場のDXアプリ「AI支援さん」を開発初期段階から実証実験に協力している一般社団法人team shien 代表理事・南大路直子さん。開発を牽引するパパゲーノ代表・やすまさと導入1年で見えたリアルな成果と課題をお話しました。
相談支援専門員13名が在籍!team shienの事業内容

今日はよろしくお願いします!
まずは team shien さんの事業内容を改めて教えていただけますか?

私たちは世田谷と新宿の2拠点で、
①障害福祉の計画相談支援
②介護保険の居宅介護支援(ケアマネ)
③訪問介護・居宅介護(ヘルパー派遣)
を柱に動いています。
相談支援専門員は13名。さらに事務員が4名いて、将来の担い手を育成中です。
世田谷区唯一の自立生活援助の指定も取っているのが特色ですね。

13名体制は全国的に見てもかなり大規模ですよね!
南大路さんご自身も相談支援専門員としての仕事はされているんですか?

はい。まだまだ私自身も支援員としてケースを持っています。
そのため、私も毎日アセスメントやモニタリングに走り回っています。

AI支援さんとの出会い「うさんくさい」が「確信」に変わる瞬間

2024年5月、ワークフォー渋谷で開催したAI支援さんの無料体験会が初対面でした。
あの時、支援現場のDXアプリ「AI支援さん」のデモを見ていただいたと思うのですが、ご感想はいかがでした?

遅刻して会場に飛び込んだので(笑)
最初は「AIが支援記録!?ほんと?」と半信半疑。でも録音してすぐに要約された瞬間、鳥肌でしたね。
それで「もう一度詳しくお話を聞きたい」とその場でお願いしたんです。

そこから毎月のように面談へ同行させてもらいましたね。
相談支援専門員さんの仕事について理解が日々深まっていきました。
AI支援さん導入初期の壁「これなら手書きの方が良い・・・」

最初の3か月は正直大変。録音→PC転送→ブラウザにアップロード…
ITツールに不慣れなスタッフは「これなら手書きの方が良い」と(笑)。
でもそれではAI活用した業務の流れを構築したい私の想いとは逆行するので、パパゲーノの福田さんにも何度も相談させていただいてました。

最初は苦労しましたよね・・・。
team shienの相談支援専門員の方々が毎日のようにパパゲーノ Work & Recovery(八幡山)に来ていただいてた時期もありました。たくさん改善要望をいただき、本当に感謝しています。

そこから、2025年1月頃にガラッと仕様を変えていただきましたよね。
アプリ内の録音、iPhoneボイスメモ連携などが実装されて操作がとてもシンプルになりました。
使いこなせるスタッフも増えてきて、「もうAI支援さんのない業務には戻れない」と口を揃えています。

書類生成機能のフォーマットも大きく仕様変更しましたよね。

そうですね。100%世田谷様式で出るようになって拍手喝采でした。
アセスメントと目標が1枚の書類に収まる優れたフォーマットで、この形式に慣れているスタッフが多かったので大変助かっています。


2時間半ほどかかっていた書類作成業務が、半分の時間で終わるように

AI支援さんを導入したことで、具体的にどれくらい業務は効率化できていますか?

私の場合は、サービス等利用計画、フェイスシート、週間計画表を作成するのに2時間半ほどかかっていたのが1時間弱くらいになりました。半分くらいの作業時間になっていると思います。
新人の相談支援専門員の場合は、3~4時間かかっていたのが1時間台になっていると思います。

作業時間の短縮以外で、実感されている効果はありますか?

担当が交代する際に引き継ぎやすい体制になったと感じています。
私の場合、計画書などは端的に書くことが多かったです。そうすると、担当者の頭の中にしかその利用者さんの詳細の情報はないということになりがちでした。
AI支援さんなら、面談の音声データ、要約した面談記録、詳細まで記入された計画書などが残るので、引き継ぎしやすいなと感じます。

確かに、相談支援専門員さんの仕事は「この利用者さんのことは、あのスタッフに聞かないとわからない」となりがちですよね。
属人性を減らす上でもAI支援さんが役に立てているのは嬉しい限りです。

機械が作ると同じ計画書になる?支援職とAIが共存する補完関係

それと、当初は「機械が作ると同じ計画書が量産されるのでは?」という懸念がありました。
ですが使っていくうちに、「聞く力」が大切だとわかってきました。

そうですね。AIにどんな情報をインプットさせるかで、アウトプットの質も変わってきます。
面談の際に、しっかり聞き取り、確認し、ご本人に納得いただくような会話の仕方が大切になってきます。

福祉も介護も、対人コミュニケーションは得意だが、書類作成や文章として書き出すことは苦手な方が少なくありません。
得意な「聞く力」を武器にしっかり深く聞き取りをして、苦手な情報を整理して書類を作る部分をAIにサポートしてもらうというのは、支援職とAIがうまく強みを生かし合えるのかなと思います。
AI支援さんへの今後の改善要望と期待

AI支援さんの今後の改善要望を教えてください。

今は音声とテキストで支援記録を入れることができます。
これに「紙(写真・PDF)」もできるようになったら100点だと思います。
今でも、関係機関から、FAXや郵送で個別支援計画やこれまでの経過をまとめた書類が送付されてくることが多いです。それらもAI支援さんでまとめて管理していきたいなと思っています。

そうですね、AI-OCR機能と僕たちは呼んでいるのですが、実は開発計画には入っています。
紙の書類を写真に撮影したり、スキャンしたPDFデータをAI支援さんにアップロードすれば、書いてある内容をAIが読み取りテキストデータで支援記録にしてくれるようにしようと思っています。
がんばって開発を進めていくので、もう少々お待ちください!

そこまでできたら、もう完璧だと思います。
あとは細かい使い勝手がより改善していくと嬉しいです。

はい!ありがとうございます!

利用者さんが相談先を探して困ることがないよう、team shienは「断らない」をモットーにしていくようチームで意識付けしています。
AI支援さんも存分に活用し、さまざまな利用者さんのニーズに応えていけるよう尽力していきます。
今後ともよろしくお願いします!


