精神障害・発達障害のある方へ【相談受付中】

【ピアサポートとは?】精神障害の当事者同士のケアをわかりやすく解説

この記事では、精神障害に関するピアサポートやピアスタッフについて知りたい方に向けて、ピアサポートの内容やメリットデメリット、ピアスタッフの仕事内容などをわかりやすく解説します。

ピアサポートとは何か?

ピアサポートの「ピア(peer)」は英語で「仲間」や「対等者」「同僚」を意味します。障害や病気・親しい人との死別など、共通する困難な経験や悩みを抱える人どうしで体験を共有したり、情報を交換し支え合う活動を「ピアサポート」と呼びます。

仲間同士の助け合いの意味合いで多様な場面で「ピアサポート」という言葉は使われますが、この記事では精神障害の当事者同士の助け合いとしての「ピアサポート」について紹介します。

ピアサポートを実践する団体の例

ピアサポートグループには、地域ごとの団体、疾患ごとの団体など様々な種類があります。「自助会」や「自助グループ」と呼ばれることもあります。

法人格は、任意団体、NPO法人、一般社団法人など非営利組織が多いです。

ピアサポートの効果

みずほ情報総研株式会社が2016年、ピアスタッフ(事業所等と雇用契約を結び、障害経験を生かして働く人)が業務に従事する全国の事業所に向けて行った調査では、ピアスタッフが他の利用者に与えるプラスの効果として、「経験者ならではの、気持ちにより添った言葉を掛ける事ができる(75.4%)」「利用者の不安・孤独が解消される(74.3%)」「経験者ならではの、生活の知恵を伝えられる(72.7%)」などの点で効果があるという回答がなされました。

日々の生活を送る中での困難を感覚的に分かり合えるのは当事者同士だけという点では、医療従事者や支援職とはまた違った部分からサポートをすることができます。

また、似た境遇の方の力になれることは当事者自身の自己肯定感を高めることにもつながります。

ピアサポートの注意点・デメリット

ピアサポートには良い面がたくさんある一方で、注意しなければならない点も存在します。

【1】自分の過去を思い出してしまう

ピアサポート活動の中では、似たような境遇や生きづらさを抱えている人の体験談を聞くことが多いです。その際に、エピソードを聞いて、自身の辛かった経験を思い出して体調が悪化してしまう可能性もあります。

参加者が辛いと感じたら退室したり、見ないようにできるような空間や文化づくり、ルールづくりが大切になります。

【2】体験に基づくアドバイスが参考にならないこともある

似た状況を経験しているとはいえ、個々の事情や症状には差があります。

他の方のお話を聞いて、自分と比較して落ち込んでしまうような状況であれば今のタイミングでピアサポートにつながることは見送るべきかもしれません。

また、当事者は「自己の経験」という意味では詳しく語ることができても、医療・福祉の専門家ではありません。ピアサポートグループに参加する場合は、そのことを加味した上で経験をシェアしたり、共感的にアドバイスを送り合ったりする必要があります。

【3】参加者から悪い影響を受けることもある

ピアサポート活動のリスクとして、参加者との間でうまくコミュニケーションが取れず喧嘩になってしまったり、良かれと思ってしたことが誰かを傷つけてしまうことがあります。そのため、専門家がファシリテート役として入ったり、何かあったときに相談できる体制をつくることが重要とされています。

ピアスタッフ・ピアサポーターってどんな人?

ピアサポート活動を行う人の中でも、事業所等と雇用契約を結び、自らの経験を生かして働く人のことを「ピアスタッフ」や「ピアサポーター」と呼びます。

障がいや疾患を通して得た自身の経験を生かして、ピアサポートの感覚を大切にしながら、事業所等と雇用契約(常勤、非常勤を問わず)を締結し、利用者のリカバリーに資する職員
加藤伸輔 編(2019)『ピアスタッフとして働くヒント-精神障がいのある人が輝いて働くことを応援する本』星和書店,p.7

精神障害当事者同士のピアサポートでは、その質の向上を目指して「精神障がい者ピアサポーター養成研修」という研修制度があります。

精神障がい者ピアサポーター養成研修とは

精神障がい者ピアサポーター養成研修は、ピアサポーターとして専門性を持って活動を行うための知識や技能の習得を目的に、自治体もしくは自治体から委託を受けた事業者が主催する研修です。

プログラムは基礎研修(2日間)・専門研修(2日間)・フォローアップ研修(2日間)の計6日間で構成されており、全て修了するとピアサポート専門員として認定を受けることができます。

(精神障がい者ピアサポート専門員養成のためのテキストガイド」第3版 より)

障害者ピアサポート研修事業の実施について | 厚生労働省 より)

ピアスタッフとして雇用されるためには必ずしもこの研修を修了している必要はありませんが、ピアサポートの核となる概念や対人支援の知識、一緒に働く非当事者との協働における注意点などを学ぶことができるため、活動の幅を広げるきっかけとして受講される方もいます。

ピアスタッフの活躍の場

ピアスタッフの活躍の場はどのようなところにあるのでしょう。

ピアスタッフは医療職や福祉職と協働してピアへの支援に当たることが多いため、障害福祉施設・医療機関・障害者雇用を推進している企業などで活動しているケースが多いです。

自分が利用者として通っていた施設で職員になるということも多く、当事者ならではの視点で利用者に寄り添った支援を実現しています。

(精神障がい者ピアサポート専門員養成のためのテキストガイド」第3版 より)

近年ピアスタッフが活躍する場は増えてきてはいるものの、求人としてのピアスタッフの募集はなかなかないのが現状であり、今後どのように活躍の場を増やしていくかが課題となっています。

ピアスタッフの仕事内容

ピアスタッフの仕事内容は、働く場所によって千差万別です。

他のスタッフと全く同じ業務を当事者の視点を生かしながら行うケースもありますし、ピア・カウンセリング(障害などの困難を持つ当事者が自らの体験に基づいて、似通った困難を抱える仲間の相談に応じる支援)や電話相談といった当事者同士であることを前提とした業務が含まれる場合もあります。

ピアサポートに興味を持ったら

ピアサポートに興味のある方は、ぜひ一度お住まいの地域や目的にあったピアサポートグループに参加してみてはいかがでしょうか。

また、すでにピアサポートグループに参加しており、より専門的に学んでみたい方はピアサポーター養成研修への参加を検討してみるのもおすすめです。

以下の記事ではピアサポートグループの体験レポートを紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。

リカバリーカレッジたちかわ体験レポート 精神障害ピアサポート活動「ハマッチャ!」に参加してきた!【体験レポート】