精神的な困難を経験した方が、希望を持って生活を送れるようになっていく過程を示す言葉「リカバリー」。
そんなリカバリーに役立つ事柄を、「ごちゃまぜコトコト」をコンセプトに学び合っている、リカバリーカレッジたちかわに体験参加してきました!
リカバリーカレッジとは?
リカバリーカレッジは、2009年にイギリスで始まった精神保健分野のピアサポート活動が発端とされています。共同創造(co-production)の考え方・手法で、当事者と専門職・支援者が協働し学び合う場をつくります。
精神障害当事者・当事者家族・支援者・地域住民など、立場を超えてメンタルヘルスについて学び合いたいという意志があれば誰でも参加が可能です。
日本では2013年東京の三鷹市に初のカレッジが誕生し、2023年現在全国に約10校が開校しています。
リカバリーカレッジは、リカバリーについて共に 学び合う場です。精神的つらさ(精神健康の困難) を体験した人の生きた経験や知恵と、専門職と呼ば れる精神健康に関する知識を学んできた人たちが、 それぞれの専門性、経験、知恵や知識を持ち寄り、 学び合いの場を共に作り上げていきます。 (リカバリーカレッジガイダンス研究班. 2019. リカバリーカレッジの理念と実践例 ( リカバリーカレッジ ガイダンス).) |
リカバリーカレッジたちかわはどんなところ?
リカバリーカレッジたちかわは、2015年に始まった日本で2番目に古いリカバリーカレッジです。
(公式ホームページ:リカバリーカレッジたちかわ)
「ごちゃまぜ」「コトコト」「よわよわ」の3つの理念を大切に、誰にでも開かれた学舎として運営されています。
(リカバリーカレッジたちかわの運営システム | リカバリーカレッジたちかわ より)
学生から立候補したメンバー(コアメンバー)がファシリテーターや運営会議メンバーとして関わっているのも特徴で、私が参加した回でも全体の進行やグループワークのファシリテーターを努めていらっしゃいました。
リカバリーカレッジたちかわの参加方法
2023年3月現在、全てオンライン(Zoom)での開催となっています。
3ヶ月を1クールとし、年3クール開校。期の途中からの参加も可能です。
受講費用はGoodMorning(クラウドファンディングサイト)で月額1,000円〜の継続支援をする形になります。
GoodMorningページ:
コミュニティでこころから元気に!メンタルヘルスに役立つ学び舎を一緒に作りたい GoodMorning by CAMPFIRE
こちらの受講費用を支払うことで正式な学生として参加することができます。
ただし、講座の中には学生登録をしないで誰でも無料で飛び入り参加できる公開講座が月に1度ほど開催されています。
今回はこちらの公開講座の様子をレポートしたいと思います。
リカバリーカレッジたちかわの公開講座に参加!
2/25(土)の10:00~12:00に行われた公開講座は以下のような流れで進行しました。
【1】チェックイン【2】テーマ①(WRAPについて)ミニ講義ブレイクアウトルームでディスカッション(休憩)【3】テーマ②(元気の道具としてのピアサポート)ミニ講義ブレイクアウトルームでディスカッション【4】シェアタイム【5】チェックアウト |
Zoomにログイン
公開講座はリカバリーカレッジたちかわのHPにZoomのログイン情報が載っているので、そちらを使って入室します。
私は二度目の公開講座参加でしたが、どちらの回も特に運営の方に事前連絡はせず、完全飛び入りで参加させてもらいました。みなさん慣れていらっしゃるようで、特に驚かれもせず迎え入れていただきました。
たちかわにはZoomの表示名に優しいマナーがあって、自分の立場とどこから参加しているかを表示するようにしています(私だと「【体験】Satomi@山梨」のような感じです)。
また、カメラのオンオフも自由で、講座の最初から最後までずっとオフにして参加している方もいらっしゃいました。
【1】チェックイン
呼ばれたい名前と、どこから参加しているかを一言ずつ順番に話していきました。
今回は20名以上の方が参加される大盛況の回だったので、どんどん次の方にパスしていきましたが、「最近あった嬉しかったこと」などちょっとした近況シェアを交えることもあるようです。
また、初めて参加される方向けに、スライドを使いながらリカバリーカレッジたちかわについての簡単な説明がありました。
【2】テーマ①(WRAPについて)
説明の後は、今回のテーマであるWRAP(元気回復行動プラン)について10分程のミニ講義です。
WRAP(元気回復行動プラン)とは?
WRAP(Wellness Recovery Action Plan=元気回復行動プラン)は、1997年にアメリカの精神障害当事者、メアリー・エレン・コープランドさんが、精神疾患を抱えつつも前向きに生活を送れる状態にある約120名の当事者へのヒアリングを元に提唱した、セルフヘルプのためのプログラムです。
元気に過ごすための5つのキーコンセプト(希望・責任・学ぶこと・権利擁護・サポート)を元に自分にとっての元気の道具(体調を整える支えになる物・事・人など)を考え、日常生活を問題なく行えている時・体調を崩してしまった時などの6つの段階的な状態に対応する自分の取り扱い説明書を作っていきます。
(WRAP(元気回復行動プラン)の全体像 | ピアクリニック より)
今回の講座ではWRAPの中身を作った訳ではなく、概要を学んだ上で関連するテーマをピックアップする形で進行していきました。
【WRAP(元気回復行動プラン)とは?】リカバリーに役立つツールについて解説!ブレイクアウトルームでディスカッション
講義が終わった後はブレイクアウトルームに分かれてディスカッションを行いました。
コアメンバーの方がファシリテーションをしてくれて、和やかに話が進みます。
私たちのグループは、自分を知るために取り組んだことのある経験、共通点が他者とわかり合うきっかけになること、「推し」が最大の元気回復ツール、といった話が出ました。
(ちなみに「推し活」は感情を活性化したり仲間とのつながりを感じたりできるという点で、セルフケア効果が高いのでは?という考え方があるようです。)
【3】テーマ②(元気の道具としてのピアサポート)
休憩を挟んで、2つ目のテーマである元気の道具としてのピアサポートについてのミニ講義です。
ピアサポートとは?
ピアサポートは「似たような境遇の仲間同士の支え合い」です。障害当事者の集い、特定の病気の患者会、母親同士のサポートグループなど、様々な共通項でのグループが存在します。
講義の中では、ピアサポートは自己や他者への理解を深めたり、活力を高めたりする利点があると述べられていました。
そして、ピアサポートで大切な相手の話を聴くことのガイドラインについても紹介がされました。
ブレイクアウトルームでディスカッション
2回目のディスカッションでは、話をし続ける人に対してどんな対応をする?という話題からスタート。
話し続けてしまう派と聞き続けてしまう派どちらの意見も出てきた点が面白かったです。
また、「グループラインで誰も反応してくれないと不安になる」という話題では「私も反応しない側になっちゃってるかも」という声があったりと、他の人の意見から自然と自分の行動を見直したり、対策を一緒に考えたりという対話が起きていました。
【4】シェアタイム
ブレイクアウトルームから帰ってきたらシェアタイムです。各々のグループでどんな話が出たかを全体の場でシェアします。
グループ毎にテーマに対する切り口や意見が違うので、そんな視点もあったのか!という発見がありました。
【5】チェックアウト
最後に今日の感想を順番に一言ずつ発表していきました。
個人的に、運営事務局のかめっちさんの「人間は完全に分かり合えないから言葉を紡ぐ」の一言にぐっときました。
リカバリーカレッジたちかわに参加してみて
今回体験という形で参加してみて3つのことを感じました。
1.はじめてでも参加しやすい
学生として継続的に参加されている方の中に入るのは少々緊張しましたが、事務局とコアメンバーの方々をはじめ、穏やかで学びのある場にしたいという意志のある方が集まっているからか、飛び入りでも安心して参加ができました。
内輪でしかわからない話が続く場面なども特になく、これからピアサポートの団体を探してみたいなという方も入っていきやすい環境ではないかと思います。
2.ごちゃまぜが心地いい
リカバリーカレッジたちかわでは、特に自分の立場を開示しなければならない場面がないので(知ってほしい場合はチェックインの時に伝えておくことも可能です)、参加者それぞれがどんな障害を持っているとか、こんな仕事をしているとか、そういったことはあまりわかりません。
場合によっては立場の開示が必要な配慮につながるケースもありますが、参加者皆が水平な関係で学び合うという目的において、立場を明示せず同じ場を共有するのは有効だなと感じました。
3.安心してパーソナルなことを開示し、対話ができる
グループディスカッションの時間は、講義のテーマを踏まえて自分の体験や意見を出し合っていきます。
特に、安心できる環境で具体的な困りごとについて仲間と一緒に考えることは、生活の質を向上させる上で大事なことだと実感しました。
リカバリーカレッジたちかわが気になったら
この記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひ公開講座に参加してみてはいかがでしょうか?
穏やかな学びの場で、仲間との交流や素敵な気づきが生まれるかもしれません!
・公式HP
・GoodMorningページ
コミュニティでこころから元気に!メンタルヘルスに役立つ学び舎を一緒に作りたい GoodMorning by CAMPFIRE
・公式Twitter
リカバリーカレッジたちかわ (@tachikawarecov1)
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