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【WRAP(元気回復行動プラン)とは?】リカバリーに役立つツールについて解説!

WRAP(Wellness Recovery Action Plan)は、日本語で「元気回復行動プラン」と訳され、自分自身のメンタルヘルスやウェルビーイングな状態を回復させるための行動計画です。

この記事では、WRAPの概要やワークショップの受講方法などについて紹介します。

WRAPとは?

WRAP(Wellness Recovery Action Plan=元気回復行動プラン)は、1997年にアメリカの精神障害当事者、メアリー・エレン・コープランドが、精神疾患を抱えつつも前向きに生活を送れる状態にある約120名の当事者へのヒアリングを元に提唱した、セルフヘルプのためのプログラムです。

精神疾患からのリカバリーに資するとして、近年日本でも全国でワークショップが開催されるようになってきています。

WRAPの特徴

では、WRAPにはどんな特徴や効果があるのでしょうか。

自己理解が深まる

WRAPでは、日常の中のどんな出来事が不調のきっかけとなりやすいかや、そこからの回復方法など自分自身の傾向を深掘りしていきます。その過程の中で、自己理解を深めていくことができます。

また、調子が悪い時に自分はこうしたい、身近な人にこうしてほしいといった自分自身のニーズを認識することにも繋がります。

自己信頼感が向上する

WRAPは、心身の調子は日々変化することを前提として、場面場面にあった自己コントロールの方法を考えていくものです。

調子を崩してしまった時にも自分の力で(援助を受けることも含め)状況に対処できるようになっていくことで、自己信頼感の向上に寄与します。

日常の中での自己管理スキルが向上する

WRAPは調子が優れない時のプランだけでなく、比較的安定している状態を持続させるために取り組みたいことなども扱います。生活習慣を見直し、健康行動を促す効果も期待できます。

医学的専門性がいらない

WRAPでは、「自分が自分の専門家である」と考えます。医療や福祉的ケアをベースに置きながらも、リカバリーのために必要なことを自己決定していく姿勢を養うことができます。

WRAPは作成も見直しも自分で行えますし、作ったWRAPをどのように実践していくかも自己判断で行っていくことができます。

WRAPの基本的な考え方(キーコンセプト)

精神疾患からのリカバリーにとって必要な要素として、WRAPには5つのキーコンセプトがあります。

①希望

苦しい状況に陥った時にも前向きに自身の可能性を信じること

②責任

人生の主導権は自分にあり、どのように生きていくかは自分で選択する責任があるということ

③学び

自分が良い状態を保つために必要なことや選択肢について自ら学ぶこと

④権利擁護

望む生活や必要なことを、自分の意志として周りに表現していくこと

⑤サポート

自らが助けを得ると同時に、自分も誰かのサポーターとなり、お互いに助けあっていくこと

これら5つのキーコンセプトを頭に置いて、WRAPの具体的な中身について見ていきましょう。

元気に役立つ道具箱

元気に役立つ道具とは、元気な状態を保つため、もしくは調子が悪くなってしまった時に気分が良くなるための行動・物・関係性などを指す言葉です。

WRAPでは元気に役立つ道具にどんなものがあるかを考えて書き出し、自分にとっての元気に役立つ道具箱を作っていきます。

元気に役立つ道具箱の例

  • 好きなお菓子を食べる
  • 音楽を聴く
  • ゆっくりお風呂に入る
  • 友人と会う
  • 読書をする
  • 散歩をする
  • 好きなだけ眠る
  • 推しのライブに行く
  • カフェに行く
  • 料理をする
  • スポーツをする
  • マッサージを受ける
  • カウンセリングを受ける
  • ペットと遊ぶ

また、元気を保つために避けた方がいいことについて考えることも良いでしょう。

  • アルコールやカフェインの摂り過ぎ
  • 予定を詰め過ぎる
  • 人の多い場所に頻繁に出かける
  • 部屋を散らかしっぱなしにする
  • 夜に考え事をする

WRAPで考える6つのプラン

WRAPでは、心身の状態を6段階に分け、それぞれの状態への対処プランを考えます。

①日常生活管理プラン

元気を保つために毎日行うことを書き出して実践します。

調子を崩しかけた時に、普段の自分はどんな行動を取っているかを思い出し、体調を立て直すために役立ちます。

例)3食きちんと食べる・就労継続支援事業所に行く・23時には就寝する

②引き金に対応するプラン

調子を崩すきっかけになりやすい出来事と、それに対する対処方法を考えます。

例)睡眠不足の日が続く→午後に15分程度昼寝の時間を取る

天気が悪い→お気に入りの傘を差して出かける

③注意サインに対応するプラン

調子を崩しそうな時に自分の中で起こる変化や反応と、それに対する対処方法を考えます。

例)お風呂に入るのが億劫になる→身体を拭いたりドライシャンプーで代替し、毎日できないことを責めない

些細な物音が気になる→耳栓を使ったり席の移動を申し出る

④調子が悪くなっているときのプラン

調子の低下が深刻だと感じる際の自分の状態を振り返り、対処方法を考えます。

例)眠れない→無理に眠ろうとせず、眠たくなるまで本を読む・音楽を聴く

嫌なことが頭の中をぐるぐると巡ってしまう→友人や主治医に話す・ノートに気持ちを書き出す

⑤クライシスプラン

自分だけで心身の不調に対処するのが難しく、誰かに自分のケアを委ねなければならないような緊急の場合(クライシス)に、どのようにして欲しいのかを指示するリストを作成します。

  1. 良い状況の時の自分について
  2. 誰かにケアを任せなければならない時のサイン
    例)しゃべろうとしない・横になって起きてこない
  3. 責任を任せたい人、任せたくない人は誰か(友人・家族・主治医・支援者など)
  4. 医療・保健・福祉関係者の連絡先と薬の情報
  5. 受けても良い治療と受けたくない治療
    (処方内容に関する希望・役に立った代替的な治療・役に立たなかった治療)
  6. 自宅・地域でのケア・一時休養プラン
  7. 入院しても良い病院、したくない病院
  8. 他人がしてくれると役に立つこと、逆に余計に気分が悪くなること
    例)静かに側にいてほしい・家族に連絡するのは自分に確認を取ってからにしてほしい
  9. クライシスプランに従わなくて良くなったことを示すサイン
    例)よくしゃべるようになる・食欲が出てくる・身の回りのことをこなせる、など

⑥クライシスを脱したときのプラン

クライシスを脱した後に性急に普段の生活に戻ろうとすると、再び体調を悪化させてしまうことがあります。

徐々に回復をしていけるために心がけたい事やスケジュールなどを考えます。

例)知り合いと会う約束をする時は、体調が安定していないので急遽会えなくなるかもしれない旨を事前に伝えておく・就労継続支援事業所への通所は、普段より短い時間で通うようにする

WRAPワークショップの受講方法

WRAPのワークショップは全国で開催されています。

WRAPの講座情報が掲載されているWRAPプロジェクトZでは、日本各地の情報を確認することができます。

5つのキーコンセプトと6つのプランについて学び、自分のWRAPを作るとなると、かなりのボリュームがあるため、WRAPの講座は通常複数日程を1セットとして開校されます。ただし1日体験会などもありますので、そのエッセンスや雰囲気に触れるために参加してみるのも良いでしょう。

WRAPファシリテーターとは?

WRAPのワークショップでは必ず、研修を修了したファシリテーターが進行役を務めます。

WRAPファシリテーター養成研修に参加するには、WRAPクラス(2日間の集中クラスが多い)を修了し、ご自身のWRAPを持っていることが必要です。

この研修を修了すると、WRAPのワークショップを開校する資格を得ることができます。

ファシリテーターの上級資格にはアドバンスド・ファシリテーターがあり、これを取得するとファシリテーターの養成研修を開くことができます。ただし、取得するためにはWRAP発祥の地である米国にて研修を受ける必要があり、現在日本での取得はできません。

【WRAPを深めるステップ】

ステップ0:体験会や講座に参加してみる

ステップ1:WRAPクラスを受講する

ステップ2:5日間のファシリテーター養成研修に参加する(WRAPファシリテーター)

ステップ3:5日間のアドバンスド・ファシリテーター養成研修に参加する(WRAPアドバンスド・ファシリテーター)

※国内での取得不可

WRAPワークショップに参加してみよう!

WRAPは自分1人でも作ることができますが、他の参加者と一緒に行うことで自分とは違った「元気の道具」やプランを知ることができ、新たな発見につながります。

ぜひ、WRAPのワークショップに参加してみてはいかがでしょうか。