2025年5月からパパゲーノ Work & Recovery(就労継続支援B型)を利用し、企業の営業事務やホームページの記事作成などを担当しているゆあさん。働くことへの「恐れ」を抱えながらも、パパゲーノで生成AIを活用した仕事と「リカバリー」に出会い、無理を減らし工夫を増やす日々が始まったのでした。
名前 | ゆあ |
所属 | パパゲーノ Work & Recovery(就労継続支援B型) |
診断名 | ADHD,不安障害 |
希望 | ・就職して月14万程度の収入がほしい。 ・自分の能力を活かした仕事がしたい。 |
困りごと | ・漢字間違い、抜け漏れが多い。なので、就労できるか心配がある。 ・気持ちが不安定になりがち。 ・行動力があるのはいいのだか、衝動的に動いてしまう。 ・自分では普通にしているだけなのに、「変わってる」「おかしい」と指摘される。 ・職場に馴染めなかったり、仕事でうまくいかなかったりしたせいで雇用契約で働くのが怖い。将来を考えると気が滅入る。 |
AI活用法 | ・文章作成の時、ヒントや修正点を挙げてもらう。 ・思い悩んだ時カウンセラーがわりに思考の整理や励ましに使う。 |
子ども時代から長く続いた生きづらさとADHDの診断

ゆあさん、こんにちは。
パパゲーノで生成AIを活用した仕事と「リカバリー」に出会えて良かったとのことですので、ぜひ詳しくお話伺えればと思います。
まずは簡単に自己紹介をお願いします。

こんにちは。パパゲーノ Work & Recoveryの利用者のゆあと申します。
子どもの頃から「変な子」「変わった子」と言われることが多くて、保育園や学校もうまく合わず、早くから「生きづらい」と感じていました。
ADHDの診断を受けたときは、長年の生きづらさに理由があったんだと分かって少し安心しました。でも時間が経つにつれ「自分は社会に迷惑をかけるのでは」と思うようにもなって、引きこもりがちになった時期もあります。
適応障害での休職・退職を経て就労継続支援B型へ

これまで仕事・働く、という面ではどのような経験をされてきたのですか?

企業で事務職を経験した後、2024年に障害者雇用でも働きました。ただ、そこで適応障害を発症してしまい休職し、そのまま退職に至りました。
少しずつ元気は戻りましたが、「また迷惑をかけるのでは」「また病状が悪化するのでは」という恐れがり、次の一歩が怖かったんです。
そこで、賃金面の悩みもありましたが、経済的に家族の支えが得られる状況でしたので、就労継続支援B型事業所に通う選択をしました。

パパゲーノ Work & Recovery(就労継支援B型)を利用することにした決め手は何でしたか?

Googleマップを使って近隣のB型事業所を色々みていたら、口コミが多く目に留まり、ホームページを見てみると「ITを使って面白い取り組みをしている」と感じたんです。
自宅からパパゲーノのある八幡山が通いやすかったこともあって見学を申し込みをしました。

口コミを見てくださったんですね!
相手の顔色を気にし過ぎる傾向を、AIが助けてくれた!

ChatGPTなどの生成AI系のツールは、もともと使われていたんでしょうか?

はい。ChatGPTはパパゲーノに入る前から使っていました。
週の振り返り、雑記や動画の文字起こしを読み込んで要約してもらったり、文章の壁打ちなどです。

日常生活にかなり使われてたんですね!実際使ってみて、ご自身の障害特性に対して役に立つなと感じていましたか?

そうですね。
私は相手の顔色をうかがって合わせてしまう傾向があるので、機械相手だと本音を出しやすいんです。
私にとってAIは“最高のカウンセラー”でした。

パパゲーノのAI活用で感じたこと

パパゲーノの仕事でChatGPTや仕事相談BOTを使ってみた感想はいかがでしたか?

文字入力の業務で、疑問点をAIがすぐ返してくれるので気軽に相談できますね。
ホームページの記事作成も、抗うつ薬の影響で頭が働かないことがあるのでAIの力で取り組みやすくなっています。
一方で、一般企業の多くはここまでAI活用が進んでいないのが現状だと思うので、ここに慣れすぎると、一般就労の環境で「遅れている」と感じて戸惑うのでは……と不安になる時もあります。

なるほど。
以前までの職場とパパゲーノはやはり大きく違ったのでしょうか?

そうですね。パパゲーノほどAIが身近に使える環境ではなかったです。
障害者雇用の職場では日報が「手書き」で、部署メンバーの日報を入力する業務がありました。
ですが、特性上、細かい文字の読み取りが苦手で誤字脱字が多く「読み込んで自動整形し、誤字をチェックしてくれる仕組みがあれば」とずっと思っていました。

手書きの日報ですか・・・!それは大変そうですね。

そうなんです。自分では注意しているつもりなのに直らず、支援員さんから「よく見て」と繰り返し指摘される日々でした。できない現実と求められる基準のギャップがしんどくて、それもあって適応障害にまでなってしまったと思います。

ミスを指摘されたりするのも辛いですよね。
AIがあれば誤字のチェックなど一瞬でできるので、そういった障害特性を補うのには有用そうです。

パパゲーノでは、間違いがあっても圧をかけられず、優しく指摘してもらえる。AIが身近に使える環境なので、誤字脱字のチェックも簡単に自分でできる。
安心して取り組めるから、改善もしやすいと実感しています。本当に助かっています。


「リカバリー」という言葉がしっくりきた

生成AIの活用以外の面で、パパゲーノに来て変わったことはありますか?

「リカバリー」という言葉との出会いが大きかったです。
パパゲーノの事業所の正式名称は『パパゲーノ Work & Recovery(ワーク・アンド・リカバリー)』と言います。毎月の利用者向けのアンケートにも「リカバリー」という言葉が出てくるのですが、英語が苦手で当初はピンときていませんでした。
でもスタッフさんのインタビュー動画を見て「リカバリー」に関心が湧き、ChatGPTで「福祉におけるリカバリーとは?」と調べたところ、「精神的な困難があっても、自分らしく生きるプロセス」という説明がかえってきました。

「リカバリー」はパパゲーノが大事にしている支援の考え方です。
実際この言葉を知ってどう感じましたか?

「リカバリー」という言葉の意味は、病気を抱えながら“自分らしく働く”ということです。
ずっと「自分に合った生き方をしたい」と願ってきた自分にはしっくりきました。

・精神的な困難を抱えていても「自分らしい人生」を生きていけるようになること
・WORKの本質は「お金を稼ぐこと」ではなく「他者に貢献し感謝されること」

「自分の力が役に立っている」という実感がある

データ入力、ホームページの記事制作、ショート動画制作、サービス資料作成など様々な仕事に挑戦いただいてますが、パパゲーノでの実践的な就労支援を受けてみた感想はいかがですか?

LDがあり英語は全くダメですし、計算も小2レベルの簡単なものしか出来ません。不注意も多いです。
そんな私でも何か無理せずに出来ることがあるはずと思っていました。パパゲーノではスタッフさんがちゃんとその人の特性などを考えて仕事を割り振ってくれているので、「自分の力がようやく役に立っている」という実感があります。

ありがとうございます。
他の方にもパパゲーノの利用をお勧めしたいと思いますか?

服装はTシャツにジーンズのようなカジュアルでOK。ルールも厳しくないけど、雰囲気は「職場」で、やっていることも高度ですよね。
正直、向き不向きは大きいと思います。特に私は下高井戸の施設外就労に挑戦しているので、より本格的な業務に近くそう感じるのかもしれません。最終的に「企業への就職」を目指す人にはピッタリだと思います。
就労移行支援と違って期間の制限がなく、工賃も出る。
本格的なデスクワークを通してじっくり取り組みたい人には向いている場所だと思います。
無理の“総量”を減らし、工夫の“総量”を増やす。

最後に、ゆあさんの今後の目標を教えてください。

できれば一般的な水準に近い賃金、目安として月14万円ほどを目指したいです。
パパゲーノは他の事業所に比べて賃金が高いとはいえ、あくまでもB型事業所の水準。家族の支えがなければ暮らしは厳しいのが現実です。
一方で、自由な雰囲気や、明るく自立したスタッフさんの存在はとても居心地が良い。だからこそ「この居心地の良さに慣れて、他でも働けるのかな」という心配があります。

そうですね。パパゲーノでは工賃は時給230円・430円・480円・630円と4つの段階がありますが、平均工賃月額は月3万円ほど。最高でも月7〜8万円ほどの工賃支給額の方で、より多くの収入を求める方は、就職される方が多いです。
収入面の心配や将来働くことへの不安とは、今後どう付き合っていこうと考えていますか?

「リカバリー」は、正直どこか“きれいごと”に感じる自分もいます。社会で生きていくには「どこかで無理をする瞬間もあるのかもしれない」と。
それでも、パパゲーノで「リカバリー」という言葉に出会えたことはありがたかった。
無理の“総量”を減らし、工夫の“総量”を増やす。
スタッフさんやAIを味方にしながら、自分らしい仕事の形を、今日できる小さなことから積み重ねていきたいと思っています。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。私は「また迷惑をかけるのでは」と怯えて足がすくむ人間ですし、私にとってのリカバリーな生き方、回復の過程は始まったばかりです。
でも、無理をゼロにできなくても無理の“総量”は少しずつ減らせると知りました。ミスを責めない人たちと、AIという道具に支えられて、私は今日の一歩を踏み出せています。 人間、環境はとても大切です。これを読んでくださった方が、自分に合った環境に出会えますように。あなたにも、あなたのペースの回復があります。焦らず、自分の味方を一つずつ増やしていけますように。